頭の体操

会話のイニシアティブと権力関係

巡回先である橋本大也さんのblogの以下の記事にコメントをば。 Passion For The Future: 「あたりまえ」を疑う社会学 質的調査のセンス ぼくはこの記事を読んでこう思いました。その書名にならって、その本に書いてあることも疑ってみたらいかがでしょうか、…

認知的負荷とXTMemoの新用法

以前から何度か紹介しているXTMemo、またバージョンアップしました。バグフィックスが中心のようです。気になる方はどうぞ。 XTmemoのホームページ VectorのXTMemo紹介 ちょうどまた新しくXTMemoのファイルが増えたところでした。 XTMemoでは、メモのまとま…

ヒマ人礼賛

ぼくは他人を「ヒマ人だな……」といって揶揄する人間になりたくないなあ、とつねづね思ってます。その理由と思われるものををいくつか思いつくままに書き出してみました。 一、ヒマ人という生き方 ヒマ人は理想とする生活スタイルですからね。自分がそうなり…

仕事、人生、そして教育(3)

最初にこれだけは言っておきたいと思います。 「転職しようと思っているにせよそうでないにせよ、25歳を過ぎたらできるかぎり早いうちに、一度は本格的な転職活動をしてください」、と。 転職活動を通してぼくが得た一番の教訓は、これに尽きます。 山一証券…

安藤健二『封印作品の謎2』

封印作品の謎 2作者: 安藤健二出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2006/02/16メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 44回この商品を含むブログ (72件) を見るこないだに続いて作品の「封印」に関わる本。 前著では「差別」に関わって規制された作品の紹介が主…

仕事、人生、そして教育(2)

前職を辞して無職となり、自分にとって、そして今の時代にとって「仕事」って何なのか、みたいなことを考えつつ、これからの身の振り方を考えてました。先月中頃より更新が止まったのは、それが一区切りして転職活動を始めたためです。そして、ひとつき足ら…

森達也『放送禁止歌』

放送禁止歌 (知恵の森文庫)作者: 森達也出版社/メーカー: 知恵の森発売日: 2003/06/06メディア: 文庫購入: 17人 クリック: 961回この商品を含むブログ (180件) を見るふり返ってみれば小学生の時分から、ぼくは「表現の保護と規制」の問題に関心を持ちつづけ…

きたみりゅうじ『新卒はツラいよ!』

新卒はツラいよ!作者: きたみりゅうじ出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2005/09メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 86回この商品を含むブログ (44件) を見る平成不況のまっただ中に求職することになり、中小IT企業に新卒未経験で就職、そして退職するまで。…

マトモな哲学のすすめ(5)

マトモな哲学のためのブックガイド・その3 哲学ブックガイドの最後ということで、少し本格的な入門書をドドッと紹介します。 最初のブックガイドで哲学における「論理」の重要性を説明しました。 論理についての研究はさかのぼれば古代ギリシャのアリストテ…

マトモな哲学のすすめ(4)

マトモな哲学のためのブックガイド・その2 マトモな哲学入門書の紹介第二弾です。 前回紹介した本には哲学者の名前がほとんど出てきませんが、今回はそういうわけで哲学者の仕事に言及する“より一般的な”哲学入門書を採りあげました。 哲学のモノサシ作者: …

マトモな哲学のすすめ(3)

マトモな哲学と「高校倫理」の違い 前回は「マトモな哲学」の“マトモな”という点に重きを置いた入門書の紹介をしました。今回は“哲学”のほうに焦点を当ててみたいと思います。 これは以前にも書きましたが、ぼくは高校で倫理の授業を受けられなかったという…

マトモな哲学のすすめ(2)

マトモな哲学のためのブックガイド というわけで、ぼくがこれまで読んだ中で「マトモな哲学を始めたい」という人に推薦できる本をいくつか紹介してみようと思います。入門書なので、「前提知識をほとんど必要としない」ということを念頭に置いてピックアップ…

マトモな哲学のすすめ(1)

hideo's hideout 哲学の境界設定 タイトルは違いますが、このつづきになります。 「トンデモ哲学」とは何か 「啓示(または“悟り”)」の問題について考えてみましょう。 宗教的、あるいはオカルト的な主張をする人はたいてい、自分自身か、自分が崇めている…

哲学の境界設定

中村さん vs bewaadさん「経済学は科学か?」 bewaad institute@kasumigaseki(2006-02-24) 中村正三郎さんの経済学観について 巡回先であるbewaadさんのところで久しぶりに「中村正三郎のホットコーナー」の名を目にしたと思ったら、こんな内容でした。 中村…

過労について(2)

ウェブ上に適当な資料が見あたらなかったので直接お見せできないのが残念ですが、前回紹介した森岡孝二『働きすぎの時代』には「労働時間の二極化」を示すグラフが示されていました。 労働者全体でみると一見ここずっと年間労働時間が減っているように見えま…

瀬田季茂『科学捜査の事件簿』

こないだ「筆跡鑑定についてフォローしてみたい」と書きましたが、あのつづきになります。 「筆跡鑑定」についてGoogleで検索していただければわかると思いますが、この世界、というか業界は、かなり“微妙”であるようです。 筆跡鑑定の「応用分野」として有…

過労について(1)

前職の退職理由の一つが過労であったこともあり、どうしてそうなったのか、その状態の何がまずいのか、そうならないためにはどうしたらよいか、といったことを知りたかったので、「過労」関係でいくつか本や資料に当たりました。 「karoshi」ということばが…

愛のわけまえ

道徳感情についての、論理的な思考実験をちょっとメモ。 ぼくたちは、というか少なくともぼくは、世界のすべての人をわけへだてなく愛さなければいけない、とは思えません。←ここちょっと注意。「思いません」じゃなくて「思えません」ということで、できる…

「現実的な「賢い」生き方のために」の補足

ちょっと落ち穂拾いをば。「批判的思考は現実的でない」ということを少し書きすぎたかも(^^; ぼくは批判的思考(クリティカルシンキング)の大ファンなので、その利点をわきまえつつ、それを「万能」であるかのように考える仕方に待ったをかけたつもりだ…

現実的な「賢い」生き方のために(3)

社会の変化によって、現代は、生きていくために必要な知識が膨大になってしまいました。アリストテレスのように一人の学者がすべての学問を修めることなど夢のまた夢です。このような世の中では、必然的に「社会的分業」が要請されることになります。 どんな…

現実的な「賢い」生き方のために(2)

以前、こんな相談をされたことがありました。近所の子どもが天動説を唱えるので、地動説を教えようとがんばったのだけどうまく説明できなかった、どうしたらいいか、と。ぼくは迷った挙句、このように答えました*1。 「ぼくたち素人にとって、そうしたことは…

現実的な「賢い」生き方のために(1)

社会心理学や認知心理学の研究が進むことで、人の判断には一般にたくさんの「エラー」が生じることが明らかにされました。口車や手品といった人をうまく騙す技術の多くは、そのような人の判断傾向の偏り(バイアス)を利用することによって成り立っています…

舟木一夫「高校三年生」

昨日の話の部分的なつづきです。昔の高校生というと、舟木一夫の「高校三年生」、というイメージがぼくにはありますね。もちろんこの歌がはやった当時、ぼくは影も形もなかったわけですが(^^; それだけにそれは正に「イメージ」の例として好都合かな、と…

「いただきます」って言ってますか?

考:「いただきます」って言ってますか? 「給食や外食では不要」ラジオで大論争−家庭:MSN毎日インタラクティブ この記事が物議を醸しています。一番中心的なテーマの部分だけ引用しますね。 TBSラジオ「永六輔その新世界」(土曜朝8時半〜、放送エリア…

「バッドノウハウ」とパラダイム

エンジニアでもないぼくがこんなことを書くのもおこがましいとは思いますが、ふと思いつき、ちょっとGoogleしてみて他にそう書いてる人もいないようなのでメモっときます。 バッドノウハウとは バッドノウハウと「奥が深い症候群」 「バッドノウハウ」という…

なぜ子どもはかわいいのか

子どもの写っている写真があったので、ぼーっとしばらく見てたんですが。ふと、「そういや、なんで子どもは“かわいい”んだろう」という疑問が頭をよぎってみたり。 ちょっと突き詰めて考えてみることにしました。「子どもがかわいい」というのは、要するに、…

ウェブの広がりと参入障壁(3)

そもそも、ウェブというもの自体が、それまで出版や放送といったマスメディアによって独占されていた「不特定多数に対する表現の場」を多くの人に開いた新たなメディアとしてありました。ウェブがなければ、こんなにたくさんの人と知り合うこともなかったで…

ウェブの広がりと参入障壁(2)

ウェブの進化、ということばにはいくつかの落とし穴があります。とりあえず思いついたのは二つ。一つ、それを単に「ウェブのシステムの進化」として語ってしまうこと。もう一つは、「進化」ということばの意味に関わることです。 ウェブの進化、といっても、…

ウェブの広がりと参入障壁

最近のウェブに関する議論を見ていて、何となく思ったこと。何となくなのでもちろん下調べも何もしてませんが。 この頃盛んに言われるようになった「ウェブの進化の方向性」というのが、昔の(?)「モダン/ポストモダン」という議論をそのままなぞっている…

伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド』(2)

途中経過の定時連絡です。「第二章 切断線を超えるもの」および「第三章 「キャラクター」とは何か」まで読んだところ。 この本、出版後たいへん話題になり、『ユリイカ』で特集があったとのこと。まだ半分しか読んでおらず、これから本題というところなので…