仕事、人生、そして教育(2)

前職を辞して無職となり、自分にとって、そして今の時代にとって「仕事」って何なのか、みたいなことを考えつつ、これからの身の振り方を考えてました。先月中頃より更新が止まったのは、それが一区切りして転職活動を始めたためです。そして、ひとつき足らずと意外に早い期間で、就職が決まりました。
「めでたく」とは言いません。まだ若いとはいえ学卒後それなりの年月を経てトウのたってしまった人間がまったく未経験の業界に転職するのに、あれこれゼイタクは言えませんでした。前職よりはまだマシかもしれない。そうであってほしい。そう願いつつ、初出社までの日々を不安いっぱいに過ごしています。


しかし、転職活動をしてみて改めて、この世の中の「世知辛さ」というか、生きがいのなさを思い知らされました。
プライベートを守れる仕事では給料が安くてそもそも生活が成り立ちませんし、そこそこの業務でカツカツの給与でも今や派遣・契約の嵐で行く末の保証がなく、生活の安定を求めれば今度はプライベートがありえないほど激務か、何かワルいことに手を染めるか、いずれにせよ体か心が壊れる“ブラック”な仕事、さもなければ新卒で大手“ホワイト”企業に勤めるか。
「新卒で大手ホワイトに入ったもん勝ち」。天才ならぬぼくたちには、そのような道しか残されていない(いなかった)のです。それに、ぼくの学卒時には今のようにブラック(あるいはホワイト)な仕事の情報を事前にたやすく手に入れることなどかないませんでした。つくづく運が悪かったなあ、と。
何というか、今の時代の「仕事」って、先へ進むほど細くなるロープの上で綱渡りをしている、というイメージなんですよね。前に進むほど、その先に進むのが難しくなるのに、でも進まないわけにはいかない。落っこっちゃうから。で、ひとたびロープから落ちると、もうどん底に行くしかないし、そこからまた元のロープへ這い上がることもできないんです。ロープに這い上がるどころか、

世の中、転落すれば行き着く先はaokigahara。2ちゃんねるの転職板なんか見てるとたまに「氏のうかな…」なんて書きこみを見かけますが、これが冗談でないのはこのグラフを見れば明らかです。またそのことは、社会的責任を重く負わされる人間により偏ることもわかります。
この規模を見たら、「いじめ自殺」なんか大した問題ではないとすら、ぼくは思います。いつ死ぬかの違いなんてそんなに重要ですか? こないだ「ゆとり教育」に絡めて少し書きましたけど、子どもばかり大切にして、大人を大切にしないこの社会って、激しく歪んでませんか?


就活を始めるに際して、証明写真を撮らねば、と。入った写真屋さんで店主のオバさんと世間話をしたんですが、オバさん曰く「フィルムが売れなくて困った」。そうなんですよね。今の時代、カメラといえばデジカメばかりになってフィルムがいらなくなってしまった。そしたら当然、フィルムを収入源にしてたところは商売あがったりということになる。
これを聞いて思い出したのが、映画『ジュラシック・パーク』です。主人公はたしか古生物学者で、DNA技術の進歩で恐竜が復活したことによって、化石を調べることを専門にしていた自分の仕事がなくなってしまった。そんなことを劇中で言っていたのを覚えています。
今の時代、いつ何どき、どんなことで自分の仕事が奪われてしまうかわかりません。ふつうに八百屋をやっていたって、駅前にドカンとチェーンのスーパーができちゃったらどう足掻いたってかないっこないわけで、潰されてしまうのです。そうして、いざ仕事がなくなってしまったらどうなるか。転職活動をしたぼくにはわかります。ハローワークの就職相談窓口で、大したスキルがありそうにも見えない高年男性職員*1に「この歳じゃねえ〜、どっこも雇ってくれないよ〜。試しに連絡してみるゥ?」と薄笑いされるのがオチ。
やる気のある人は再チャレンジできる社会。と、口先だけで言うのは簡単なんですよ。弱肉強食政策をゴリゴリおしすすめる某国政府には、その実証を見せていただきたいと思います。


輝かしいバラ色の未来なんていらない。灰色の「終わりなき日常」で十分だ。それすら望めないなんて、ほんと、生きがいのない世の中。「希望格差社会」の実態、今回の就職活動を通して、痛いほど思い知らされました(ーー;
教育で、「レリバンス」はもちろん大事なことで、これまでずっと過小評価されてきたぶんだけ強調する必要はあるんですけど、それだけじゃなく、希望格差社会の実態についても教育の場できちんと伝えてほしい。「高卒はロクな就職先ないぞ」とか「30以上は転職厳しいぞ」とか「生涯収入は大手だと理系より文系のほうが5千万も多いぞ」とか、世のキャリアコンサルタントたちが当たり前のように知っている“現実”をナマの形で。そうしたら今度は、学校を卒業したくなくてわざと留年を繰り返す人間が出たりして(^^;;;

*1:そう、その不誠実な態度にムカついたのはいつだって高年男性職員でした。大した能力もないくせに、たまたま運よくこんなマッタリ仕事で生活も十分保証されて、やるのは運の悪い人間をいじることかよ、と、ぼくはしばしば思わされました。