安藤健二『封印作品の謎2』

封印作品の謎 2

封印作品の謎 2

こないだに続いて作品の「封印」に関わる本。
前著では「差別」に関わって規制された作品の紹介が主でした。今回は、権利は権利でも「人権」というよりは「著作権」、もっと言えば「ビジネス」にからんだ“生臭い”話が中心となっています。いや、何から何まで「ビジネスライク」だったら、とても寒々しいことですが、それはそれでドライに解決されたことでしょう。ビジネスに徹するわけでなく、人間くさい感情の問題で余計にこじれてしまったという意味でも正に「生臭い」話だなあ、と。
本書では前著のようなある意味「わかりやすい」理由は少なく、はじめに「封印された作品」の存在を知り、次になぜそれが封印されたのかを調べ、人々の口にのぼる様々な説を吟味し、それでもよくわからないので関係各所にあたり……というプロセスを経ることで、どうにかこうにか封印の「原因」がおぼろげながら浮かんでくる、というような感じです。こないだの『放送禁止歌』と異なり、責任の所在がアイマイではないぶんだけ関係者の口が重くて、真相そのものは結局闇の中、ということもあるんですが。そのタイトルが、前著よりも心にしみます。
圧巻はやはり『オバケのQ太郎』でしょう。“オバQ”が封印されたことは聞きおよんでましたが、あの劇画版を除いて、まさかマンガ・アニメを含むすべてが封印されていたとは知りませんでしたし、その理由も、ぼくはてっきり黒人差別がらみの問題だとばかり思いこんでいました。まさかそんなことになっていたとは……。
と、知らない人のためにネタバレ手前でやめときます。興味のある方はぜひ本書をご覧になってください。


もう一つ。
章題なんですが、センスのよい1・2章と、センスのない3・4章のギャップが大きいような。『ジャングル黒べえ』を扱った第2章「悲しい熱帯」はウマイ!と思いましたが*1、『オバケのQ太郎』を扱った第3章の「怨霊となったオバケ」というのは、どうも…(^^;

*1:ネタを説明するのも興ざめなことですが、わからない方もいると思うので。『悲しき熱帯』ISBN:4121600045の有名な本があるのです。