iDeCo改悪について、自分の考えをまとめてみたいと思います。
そもそもiDeCoって何?
iDeCoってわかりにくいんですよね。
というわけでその解説はこちらの動画に丸投げ(すみません)
NISAと比べて、所得控除がどうだとか、手数料がかかるとか、出口で課税されるとか。
計算してみないと得なのか損なのかわからない、人によっても変わる、っていう。
その上
もともと年金制度の補完として出てきたものだから、
年金と同じく年を取ってから、60歳以降でないと入れた資金が引き出せない。
この動画の5:50以降に出てくるスレ民の発言にご注目。
「それはマジで分かるわ。
将来その辺りの税制や税率が変わってる可能性もあるもんな。」
「複雑な割に、
政府も信用しなければならないというのが最大のデメリット」
iDeCoの改悪って?
「5年ルールが10年ルールになる」というものなのですが・・・
これも丸投げします(すみません)
これまでは
会社の退職金とiDeCoの受け取りのそれぞれで退職金控除が得られた、
要は「退職金控除の二重取り」ができたのが、
今回の法改正案ではそれができなくなる。
その結果、
退職金控除が減った分だけ所得税をもっていかれることになった、
という話。
今までもらえることになっていたお金がもらえなくなるので
これが「改悪」であることは間違いありませんが、
それ以上に根深いのが先ほど出てきたこれ
「それはマジで分かるわ。
将来その辺りの税制や税率が変わってる可能性もあるもんな。」
「複雑な割に、
政府も信用しなければならないというのが最大のデメリット」
iDeCoでは入金したが最後60歳まで引き出すことができず
問題が起きても逃げ出すことができないのに、
その「退路を断たれた」状況で「問題を起こされた」ということ。
この番組で問題視されていて、コメント欄で大騒ぎになっているのも正にそこです。
今回の改悪について思うこと
大事なことなので二回言いますが、
これが「改悪」であることは間違いありません。
一方で、
このルール変更がiDeCoの設立趣旨に悖らない変更であること、
あえてそういう言い方をするなら「改正」でもあるのかな、とも思いました。
iDeCoという制度が何を目的に用意されたのか、ということですが、
「確定拠出年金」という字面を見てわかるとおり
もともとは「年金」(の補完)であって、「退職金」というわけではありません。
今回のルール変更で
「退職金」としては改悪になりますが、
「年金」としては特に変わったところは、現時点では、ありません。
年金と退職金、どちらも似たようなものじゃないか。
これが似たようなものであることは確かで、
だからこそ年金としても退職金としても受け取れるオプションがあったわけです。
退職金受け取りオプションのうまみが旨すぎてそちらがクローズアップされてきたところで
その改悪ということで大騒ぎになりましたが、
しかし
現代の世の流れを考えてみると
この二つは今後それぞれ別々の道を辿ることになるだろうと思われます。
退職金の今後
まず「退職金」についてですが、
これについての優遇措置(退職金控除)は、今後無くす方針だろうと思っています。
退職金は「一つの会社で長く働き続けること」を前提にした制度で、
それに対する優遇措置は皆勤賞とか功労賞みたいなものになっています。
「103万円の壁」と同じで、そのような優遇措置があると、
それにフィットしようとして人々の行動が誘導されます。
転職すると損をすることになり、転職が控えられるようになる。
その結果、転職市場が広がらず、
転職市場が小さいこと自体が転職を妨げることになり、転職しづらくなる。
すると、「最初に入った会社」にしがみつかざるを得ず、
そのことが様々な問題の温床になる。
この「様々な問題」を解決するには世の中が転職しやすくなることが必要で、
「退職金の優遇措置」はそれを邪魔する壁の一つなので、
「103万円の壁」が問題視されたのと同様、
廃止の方向に向かうことだろう、というのが自分の予想です。
転職する人が増えるほど、
同じように働いているのに、一社で勤め上げた人だけ優遇されるのは不公平じゃないか、
という声も大きくなっていくことでしょうし。
そもそも中小企業には退職金制度の無いところも多く、
そういった会社の社員は生涯年収の全体にふつうに税金がかかっているのに、
大企業ではその一部を退職金として受け取ることで退職金控除で税金が優遇される、
というのも考えようによっては不公平かもしれません。
大企業で高給取りだと累進課税でもともと払ってる額が違う、という話はあるものの。
そういうわけで退職金の優遇措置が問題だということになると、
まず真っ先に「勤続20年超え」のボーナス(40万→70万)が廃止されるでしょうし、
そのうちだんだんと退職金控除自体が縮小されていくことになるでしょう。
あるいは、
インフレが進む現在、「退職金控除の金額を変更しないこと」によって、
退職金に対する優遇措置の減少を実現するのかもしれません。
そう考えたときに、今回の「改悪」は、
iDeCoの、というより、
退職金優遇措置の改悪の第一歩なのではないか、
そしてそのことは、単に悪いことばかりではないんじゃなかろうか、
そんなことを思いました。
アメリカとか(ひろゆきの住んでいる)フランスとかで
「退職金控除で得をする人たち」がどんな人かを考えてもらったときに、
それはひろゆきの言うような「優秀な人」たちなのでしょうか。
そちらのやり方のほうがよくて、日本社会もそうなるべきなのだとしたら、
今回の「iDeCoの改悪」それ自体は、そこまで悪いことではないのじゃないか。
そう考えられなくもない、かもしれません。
年金の今後
今回の改悪は年金としての受け取りには影響がないようですが、
だとしたら年金なら安泰なのでしょうか。
退職金のときと同様「今後の日本社会がどうなるか」という観点で考えると、
ご存知のとおり高齢化が進みに進んでいくので
退職金優遇措置の廃止と同じ意味で年金が廃止の方向に向かうことはありえません。
その点は、退職金と明確に異なるところです。
ところが、年金は、退職金控除と違って、
これまでに何度も、というか年々、改悪に改悪を重ねています。
今生きている高齢者の年金を今生きている現役世代が払う「賦課方式」の特性上、
少子高齢化の人口 “逆” ピラミッドの下では、支え手が足りないからです。
このような状況で、社会をどんな方向に誘導していくのがよいのか。
一つは、少ない年金でも生きていけるように、高齢者の支出を抑えること。
湿布目当ての通院を制限する、みたいな話がそれです。
もう一つは、少ない年金の足しになるような、蓄えをつくらせること。
iDeCoとNISAができた本当の目的はこれだろうと思っています。
だとすると、
iDeCoの利用を避けさせることになる今回の改悪はよくないんじゃないの。
そうなりますよね。
先の話と結論が逆じゃないか、と思われるかもしれませんが、違うんです。
ぼくが支持するのは、
「退職金としての」iDeCoではなく、「年金としての」iDeCoだからです。
iDeCoのあり方
冒頭で述べたように、iDeCoの制度は複雑怪奇です。
なんでこんなにややこしいのか。
それは、iDeCoが、年金や退職金のあり方をそのまま踏襲しているからです。
会社員の場合、年金も退職金も、本来支払われるべき給与の中から、
会社側が勝手に天引きして積み立てています。
天引きされた分は収入になりません。
年金や退職金を積み立てた分だけ収入が減っているのですから、
これは要するに所得控除です。
この年金や退職金の事務にも人手がかかっているわけですから、
その事務員の給与の捻出で会社の人件費がとられており、
その分だけ会社員の収入も知らぬ間にちょっぴり引き下げられています。
これは要するに手数料です。
最終的に老後になって積み立てていた年金や退職金の払い戻しがあるわけですが、
これに対して所得税の徴収が行われます。
iDeCoの複雑な制度は、このような年金や退職金の実態をそのままなぞっているだけです。
所得税の徴収の仕方も、年金や退職金のものをそのまま適用しています。
iDeCoはよくわからないから近づかないほうがいい、と言われるのに
結局ほぼ同じ制度であるところの年金や退職金は、なぜそう言われないのか。
「知らないうちに勝手に引かれている」からですね。
もしiDeCoに合わせて年金や退職金の制度を「自分で積み立てる」方式に変えたら、
きっと誰も近づかないようになるはずです。
だとしたら、年金の足しとなる蓄えをつくらせるために、
iDeCoも天引きにしたらどうか。
それには意味がありません。
そうなるとますます年金と区別がつかなくなるので、
年金の徴収額を増やすのと何も変わりがないからです。
そして国民がそれに賛同するとも思えません。
現状の社会保険料(という名の税金)すらヒーヒー言いながら収めているのですから。
それでは、iDeCoはどうしたらいいのか。
素人(ぼく)が考えたiDeCo改正案
iDeCoを廃止してNISAに一本化する、
今までiDeCoで積み立てた分は旧NISAと同じようなかたちで残す、
管理手数料は凍結し、出口の税金の徴収法は変えない。
・・・が一番単純でよいのではないでしょうか。
iDeCoを残すのだとしたら、
退職金でなく年金として受け取る方向に利用者を誘導するよう、
年金方式での受け取りに優遇措置をつけたらどうか、
と思います。
いっそiDeCoの年金受け取りからは税金をとらないとか。
それなら退職金控除の改悪で文句を言っていた人たちも納得するのでは。
そもそも、年金から税金をとるのって微妙じゃないですか?
国民年金や厚生年金それ自体からの税の徴収を無しにすると
その財源はどうするのかって話になるので、
(歳出の1/3を占める社会保障費が減らせない限り
減税が現実的でないのはわかります)
iDeCoの年金受け取りだけ特別扱いしませんか、という話なんですが・・・
退職金受け取りの控除二重取りであまり徴収できなかったのと変わりませんよね、と。
あー、国保。国保かぁ・・・
配当控除でも問題になるあれですね・・