頭の体操

マトモな哲学のすすめ(9)

まず最初に、「学問」という言葉の定義をします。 世の中にはいろいろな問題があります。 いま言った「問題」というのは、「プロブレム」じゃなくて「クエスチョン」のほうなんですが。 で、そのクエスチョンに対して、考えたり、調べたり、実験してみたりし…

橘玲『朝日ぎらい』

おひさしぶりの読書感想文ですが、前回にひきつづき政治系の本。朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論 (朝日新書)作者: 橘玲出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2018/06/13メディア: 新書この商品を含むブログを見るこの本、タイトルはこんなで…

中島岳志『「リベラル保守」宣言』

しばらくぶりの読書感想文になります。「政治と宗教の話はしないほうがいい」と言われますが、もとより宗教の話題を出すことの多いこのblogでは今さらの話なので気にせずいかせていただいて。 今回はそのタイトルが気になって手にしたこちら。*1「リベラル保…

栃内新『進化から見た病気』

2016/12/16に一度投稿した記事なのですが、誤字を見つけたので修正して保存したところ、Linuxを使っているせいでか、なぜか記事が全面的に文字化けしてしまいまして・・・ Googleのキャッシュからデータをサルベージ、記事を復旧しての再投稿となります。 季…

マトモな哲学のすすめ(8)

この記事はもともと読書感想文として書き始めたのですが、書いてみたら内容的につながってしまったので、タイトルを変えてこのシリーズに含めてしまいました。 「マトモな哲学のすすめ」は初心者向けに書いてるつもりなので、ややこしくなりそうな話はなるべ…

今回のMMD杯で思ったこと

一つめ、「テーマに合うネタが思いつかなかった」というコメを何度か見かけたんですが。 それで参加を断念されたりしたなら、もったいないな、と。よくMMD杯を「テーマに沿った動画を作って投稿するイベント」として紹介するメディアやblogの記事を見かける…

マトモな哲学のすすめ(7)

マトモな哲学のためのブックガイド・その4 哲学入門記事のつづき、8年ぶりのブックガイドです(^^; 前回までは哲学入門ということで、「哲学の考え方や歴史」といった基礎的なことに焦点を当てたラインナップを紹介しました。 久々のブックガイドとなる…

マトモな哲学のすすめ(6)

超久々の読書感想文です。 以下の哲学入門記事のつづきなんですが、 …これ書いたのもう8年も前なんですねΣ(゜д゜; マトモな哲学のすすめ(1) - hideo's hideout. マトモな哲学のすすめ(2) - hideo's hideout. マトモな哲学のすすめ(3) - hideo's h…

2012年下半期ボカロお気に入り曲集(8)

2012年下半期、しめくくりはいろいろごちゃ混ぜでお送りします。 おもしろネタ曲特集 逆エッヂP(音楽)、rak(イラスト・動画)、ムトウ 【ニコニコ動画】【GUMI】夢を叶える方法【オリジナル曲PV付き】いまだ夢を叶えるに至っていません… numachi 【ニコニ…

ニコニコらしさって? 落穂ひろい

ボカロお気に入り曲集シリーズのつづきをあげるつもりでしたが、気になる記事を見かけたのでちょっと予定変更。 「ニコニコらしさって?」シリーズのつづきになります。*1 ニコニコらしさって?(1) - hideo's hideout. ニコニコらしさって?(2) - hide…

ニコニコらしさって?(2)

どんな動画が流行るのか 印象論から抜け出すためにはやっぱり事実、やっぱりデータですよね。動画の投稿数や再生数の実態を調べてみた方がいらっしゃるので、その結果を見てみましょう。 【ニコニコ動画】Vocaloid界の厳しい現実を数字で見る動画【司会:結…

ニコニコらしさって?(1)

ニコニコしはじめた頃の思い出話 「継続プレミアムLv4」のスタンプがもらえました。 ニコニコにアクセスしたらお知らせアイコンが「1」になっていたので何かと思って見てみたところ、このスタンプ獲得のお知らせで、「プレミアム会員4年間継続した」とのこ…

中島隆信『刑務所の経済学』

刑務所の経済学作者: 中島隆信出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2011/11/22メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (10件) を見るこの本、題名に「経済学」とついてはいますが、あまり経済学らしい話が出てきません…

宗教的な、あまりに宗教的な

以前、哲学についての入門記事を書いたのですが、その際に初心者向けのブックガイドをやっています。 マトモな哲学のすすめ(1) - hideo's hideout. マトモな哲学のすすめ(2) - hideo's hideout. マトモな哲学のすすめ(3) - hideo's hideout. マトモ…

『Fate/Zero』と道徳的直観

Fate/Zero(1) 第四次聖杯戦争秘話 (星海社文庫)作者: 虚淵玄,武内崇出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/01/12メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 231回この商品を含むブログ (203件) を見る今回は『Fate/Zero』というアニメ(画像は原作の小説)のエピソー…

「愛」とは何か

以下の書きものは旧本館からの転載です。 もう5年も昔の書きものですが、今読み返してもあまり考え方に進歩がないのでちょっと苦笑してしまいました(^^; それは「倫理学」の期末テストでのことだった。 「愛について述べよ」。 答案用紙のほぼ半分を占…

「正義」という快楽(2)

テレビや新聞などで聞いたニュースを肴に話をしていると、ことの「善悪」に一歩踏みこんだとたんにガラリと様子の変わる人、というのをぼくはよく見かけます。 一転して神経質そうな仏頂面になって、いかにも自分は真面目な話をしているんだというような、ふ…

「正義」という快楽(1)

「人という字は──」 誰でも一度は聞いたことがあるだろう金八先生の名言です。正確な文言は覚えてませんが、人と人とが互いに支え合ってできている、というようなことを言っていて、ぼくも小さいころはそれを字源(字形の由来)として信じていました。 実は…

杉本厚夫『映画に学ぶスポーツ社会学』

今年は国際的なスポーツイベントがいろいろありました。年初にトリノオリンピックがあり、春先?にワールドベースボールクラシック(WBC)の第一回。さらにサッカーワールドカップ。 そして、スポーツにからむ事件も、いくつか起きています。そんなときに読…

「若者論」者の欺瞞を見破るためのいくつかの論点(3)

前回からストレートにつづきます。「B」とか「P」等の意味については、前回のエントリを参照してくださいね。……と、前置きしたところで、いざ。 nature or nurture、「氏か育ちか」という問題に関わって、「たかが数十年ぐらいで人間の先天的特質が変わる…

「若者論」者の欺瞞を見破るためのいくつかの論点(2)

前回提示した論点を乗り越えることができたなら、その議論は、まず今と昔の事実をしっかり押さえ、しかも現代の若者が過去のどの時代と比べても確実に「悪」であることを証明できた、ということになります。 しかし、もう一言だけ食い下がらせてください。 …

「若者論」者の欺瞞を見破るためのいくつかの論点(1)

3連休で雨が降って家を出られなかったので、書きました(^^; 前回からの流れになりますが、主題としては切れているのでエントリのタイトルを変えてます。 テレビや新聞、週刊誌、あるいはblog、はたまた世間の“空談”といったメディアによって人口に膾炙…

森達也『スプーン』(3)

というわけでつづき、さっそく秋山眞人と著者の会話から。 「狂人と超能力者との区別は僕らにはつきません」 「はい」 「すごく失礼な言い方になるかもしれないけど、こうして撮影を続けながら、僕はただの狂人を撮っているだけじゃないだろうかという不安を…

森達也『スプーン』(2)

前回のつづきです。 今回は本書の中の印象的なところを拾ってコメントしていきたいと思います。 超能力者・秋山眞人の妻に著者が質問して返ってきた答え。 「……別に超能力者だから結婚したわけじゃないですし。普通ですよ。普通の夫だし普通の父親です」 そ…

森達也『スプーン』(1)

このところずっと森達也づいてるぼくですが、今回読んだのはこれです。 スプーン―超能力者の日常と憂鬱作者: 森達也出版社/メーカー: 飛鳥新社発売日: 2001/03メディア: 単行本 クリック: 25回この商品を含むブログ (19件) を見る森達也の他のいくつかの本と…

登場人物の口調と社会的役割

マンガやアニメ、小説やテレビドラマなんかにふれていて、小さい頃とても疑問に思ったことがありました。それは「登場人物の口調」です*1。 たとえば、女性の登場人物の「あら、」とか「〜のよ」「〜だわ」。ぼくは関東生まれの関東育ちで関東弁を話す、いわ…

小市民主主義宣言

ぼくのものごとを考えるときの姿勢は「プラグマティズム」に多くを負っています。その中でも特に、政治的な問題を考えるときの自分の立場について、あまりしっくりしたことばがなかったので、自分でつくりました*1。それが、こないだチラッと書いた「小市民…

「ゲーム脳」と子どもの教育

リヴァイアさん、日々のわざ:世田谷ゲーム講演について、ブログ内のリンクをまとめます これは、こないだ話題になった「世田谷区ゲーム脳講演会」の顛末を当事者であるライターの方がまとめられた記事です。 + C amp 4 + - 子供にとって有害なもの ゲーム…

森達也『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』(2)

マスコミの話は置いておいて、先に進みます。著者のことば。 撮影の準備期間も入れればもう二年以上彼らと接してきたことになるが、オウムについて君は何がわかったの? と訊ねられれば、僕はこう答えるだけだ。 「何もわからないことがわかりました」 世の…

森達也『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』(1)

こないだ『放送禁止歌』を採りあげました。世の中のこと、そして宗教の問題についてこだわりをもつぼくが、同じ著者の手になるこの本を採りあげない理由はありません。 「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔 (角川文庫)作者: 森達也出版社/メーカー: …