PC入力コストの削減(2)

というわけで昨日のつづき、「キーボード操作のコスト」の削減について。
入力コスト削減の極意は「使うんだけど、使わない」ということですね。おお、何とか道の極意みたいだ……(^^; 要するに、キーボード操作のコスト削減ということも、「キーボード操作自体をなるべく減らす」ということになります。どうやって減らすのか。キーボード操作というのは細かく見ると、目的のキーまで指をもっていく動作と実際にキーを叩く動作とに分けられます。ということは、コスト削減の方針としては「なるべく指を定位置から動かさずにすむこと」「キーを押す回数自体を減らすこと」ということになる。ただし、「呪文を覚えるコスト」とは区別しているので、キーボードショートカット以外の方法で……と考えると、ありうるのは「キー配列の合理化」です。
キー配列というと、一般に知られているのは「ローマ字入力」か「かな入力」か、ぐらいだろうと思います。もう一歩踏み込んで、キーボードに標準的な「QWERTY」(くわーてぃ)配列以外に「DVORAK」(どぼらっく)配列の存在を風の噂で聞いたことがあるという人がいる程度でしょう。このへんのことに足を踏み入れると、実はかなり奥が深いのです。奥は深いんですが、ぼくの知識は最近ひろってかじったばかりの浅いものなので、簡単にしか説明できませんけどもね(^^;


というわけで、ちょっと脱線を含みつつ、ぼくのタイピング事情について。
ぼくがタッチタイプを始めたのは大学に入ってからでした。大学に入って本格的にコンピュータを使うようになったからです。その以前にも高校時代にワープロを買ってもらってキーボードを触ってはいましたが、当時はキートップを確認しつつ右手人差し指一本で打っていたように覚えています。正式なタイピングを教わっていない人は昔のぼく同様一本指で打っていることが多いというのが、その後他の人のタイピングを見てきての実感です。
大学にあったコンピュータのキー配列は日本にあるほとんど全てのキーボード同様、QWERTY配列でした。その上、情報処理の授業でインストラクターをしていた上級生に「どうせアルファベットも打つんだからローマ字で覚えちゃったほうがいいよ」と言われたこともあり、QWERTYローマ字入力というのがぼくのタッチタイプのデフォルトとなったのです。ローマ字といってもさらにいくつか方式がわかれますが、ぼくは「ん」に「M」を使わないヘボン式。しかし、QWERTY・ローマ字・ヘボン式、と並べてみると、あまりに多数派すぎる組み合わせですね(^^;
で、この頃時間がとれるようになったので、これを少し見直してみようと思ったのでした。


QWERTY配列とは左手ホームポジションの一つ上の列にあるアルファベットの並びに名前をとった英字配列です。2ちゃんねる語に「qあwせdrftgyふじこlp;@:「」」というのがありますが、こうなるのがQWERTYローマ字。
QWERTY配列の特徴は「打ちにくい」ことで、不合理でありながら歴史的経緯によってスタンダードになったものの代表例としてしばしば引きあいに出されます。あまりに理にかなわない配列なので「昔のタイプライターは高速打鍵すると印字しているバーがぶつかりあって壊れてしまうので、あまり速くならないようにわざと打ちにくくつくられた」という話を聞いたことがありますが、その話はどうも都市伝説の類であったようです。ただ、そんな噂に多くの人が納得してしまうほど、おかしな並びであることは疑いようがありません。

それで、それを合理化しようといろいろな配列案が出ましたが、その中でもっとも有名なのがDVORAK配列です。
DVORAK配列の特徴は左手ホームポジションに母音が「AOEUI」と並ぶことで、右手で子音、左手で母音を交互に打つこと(左右交互打鍵)を意識した配列です。また、出現頻度の高い文字をホームポジションにまとめ、頻度の低い文字をその下に配置するなど、なるべくホームポジションから指が離れず、打ちにくいホームポジション下の列に指がいかずにすむようにも考えられています。歴史の古い配列なのでもっと合理的な配列がその後に出ているようですが、QWERTYに対する対抗馬として一番大きな勢力ではあります。この下の「DvorakJP」というサイトにある「Dvorak配列は本当に優れているのか?」という記事が参考になります。

QWERTYに比べDVORAKが優れているのは明らかです。母音がまとまっていて交互打鍵するため、音節のほとんどが子音+母音でできている日本語に向いていそうな気もします。ところが、このDVORAK配列でそのままローマ字入力を行なう「DVORAKローマ字」は必ずしも優れた入力方式とは言えません。それは日本語入力を前提に考えられた配列ではないからです。このページにある「Dvorakの短所」に挙げられているとおりですが、もっと具体的なデータも出ています。


ここで少し時間を逆戻り。ローマ字入力をちょっと工夫して打鍵数を減らすことを目指した入力方式として、「AZIK」(えーずぃっく)というものがあります。
ぼくがローマ字入力を見直すきっかけになったのは、どこかでこのAZIKという名前を見かけたことでした。どんなものかなと思って試しに入れてみたんですが、これが驚くほど敷居が低かった。配列はマニュアルを読むだけでスッと入ってくるような感じで、覚えるのに30分もかかりませんでした。これはQWERTYローマ字に慣れている人ならたぶん誰でも同じだと思います。ただ、配列を頭で覚えられても手が覚えなくては打てません。これも、最初はごく少数のルールさえ覚えれば後はQWERTYローマ字のままでよく、段階的に学習が進められるのが大きな利点です。そして実際、そのことによって打鍵数が確実に減らせるわけです。こんなことを書いてるぼく自身、AZIKを始めてまだ一週間も経っていません。

こんなに簡単にタイピングがラクになることを知ってしまうとどうしても、もっといい方法はないかと“欲”が出てきます。AZIKのホームページに、DVORAKローマ字のAZIK版である「ACT」という入力方式のあることが書いてありますね。それで、このACTについて調べてみた結果いきあたったのが、ACTをもう一歩合理化したキー配列「JLOD」でした。

AZIKを知った目でこの配列を見ると、これがいかにスッキリしているかがわかる。DVORAKローマ字の日本語拡張としては、これがほとんど決定版と言えるのじゃないかと素人目には思われます。
で、ここで先ほどの「キー配列の各指利用率」に戻るんですが、そこではこのACTやJLODでの各指利用率も検討しています。他の配列に比べて指の利用率の分散の仕方が小さいことが特徴で、これが大きな利点なのですが、問題がないわけではない。左手小指で「A」を打つ関係で、どうしてもこの指の利用率が高くなるわけですが、このページのはじめのほうにもあるとおり「小指は使いすぎないほうがいい」からです。そうすると、ローマ字入力の合理化ということを突きつめて考えたなら、DVORAKにとらわれず、ここで「左手小指と左手中指の配列をそっくり取り換えてしまう」のが一番なんじゃないだろうか、と思ったわけです。
AZIKにするのはすんなりいけましたが、JLODの場合は「姫踊子草」というキー配列変更ソフト用のものがそこに用意されています。定義ファイルの中身をのぞいてみるととても簡単で、そのソフトを知らなくても書き換えは容易でした。そうして準備してみて、いざ、と姫踊子草を導入してみましたが……ぼくが愛用しているエディタ「xyzzy」上でアルファベットの入力が化ける等の問題が生じ、あえなくボツ(TT)
窓使いの憂鬱」で実装できればいいのでしょうが、こちらは定義ファイルの書式が複雑で、このためだけに導入するには「ラクをする」という一番肝心なポイントから外れています。


う〜ん、何とかならないものだろうか……とちょっとだけ頭を悩ませつつ、しばらくAZIKでいこうと思っているところです。
え、「かな入力」は、って? ── 手数を減らすという点ではそれが最適なのは重々承知してるんですが、ローマ字タイパーにはやっぱり敷居が高いのでどうしても気分が萎えてしまって(^^; アルファベットははじめからDVORAK、日本語ははじめからNICOLA、とかだったら何も問題はなかったでしょうけどね。もしこれからタイピングを始めるという人がいたら、この組み合わせをおすすめしたいと思います。

*1:InternetExplorerやIEコンポーネントブラウザでは見えません。そうしたブラウザを使っている方には、Googleのキャッシュで見ることをおすすめします。http://64.233.179.104/search?q=cache:UZ08aEFlCOoJ:www.eonet.ne.jp/~gekkao/comp/eval/eval_keylay.html+%E3%82%AD%E3%83%BC%E9%85%8D%E5%88%97%E3%81%AE%E5%90%84%E6%8C%87%E5%88%A9%E7%94%A8%E7%8E%87&hl=ja&ct=clnk&cd=1&lr=lang_ja