アカロフ&クラントン『アイデンティティ経済学』

あと最近読んだ経済学書をもう一冊。

アイデンティティ経済学

アイデンティティ経済学

経済学というと応用数学のイメージが強いですが、このごろ手にとるのは心理学寄りのものが多いような気がします。経済学と心理学が近しい間柄にあるのは、「効用」「経済人(ホモ・エコノミクス)の仮定」などを振り返ってみればわかるように、経済学が人の損得の感情と経済行動についての学問でもあるからです。
応用心理学としての経済学、といってすぐに思い浮かぶのは「行動経済学」ですが、「アイデンティティ経済学」は場合によってそれと異なる(より正しい)予想or結論を導く、とアカロフ&クラントンは言います。何が違うのか端的に示されないのでわかりにくいんですが、こんなふうに説明するとハッキリするでしょうか。行動経済学は「(より個人的な)認知心理学」をベースとしており、アイデンティティ経済学は「社会心理学(対人心理学)」をベースとしている、と。
人は損得、有利不利を考えるときに、客観的な損得勘定から外れた判断をしがちなのですが、その原因として人間の認知能力の限界や偏り、錯覚に注目するのが行動経済学。社会的地位や位置、メンツやプライド、自己認識が邪魔をして判断が歪むことに注目するのがアイデンティティ経済学。と、どこまで正確か怪しいですが、そんな感じに自分の中では整理しました。