よのなか

森達也『スプーン』(3)

というわけでつづき、さっそく秋山眞人と著者の会話から。 「狂人と超能力者との区別は僕らにはつきません」 「はい」 「すごく失礼な言い方になるかもしれないけど、こうして撮影を続けながら、僕はただの狂人を撮っているだけじゃないだろうかという不安を…

森達也『スプーン』(2)

前回のつづきです。 今回は本書の中の印象的なところを拾ってコメントしていきたいと思います。 超能力者・秋山眞人の妻に著者が質問して返ってきた答え。 「……別に超能力者だから結婚したわけじゃないですし。普通ですよ。普通の夫だし普通の父親です」 そ…

森達也『スプーン』(1)

このところずっと森達也づいてるぼくですが、今回読んだのはこれです。 スプーン―超能力者の日常と憂鬱作者: 森達也出版社/メーカー: 飛鳥新社発売日: 2001/03メディア: 単行本 クリック: 25回この商品を含むブログ (19件) を見る森達也の他のいくつかの本と…

登場人物の口調と社会的役割

マンガやアニメ、小説やテレビドラマなんかにふれていて、小さい頃とても疑問に思ったことがありました。それは「登場人物の口調」です*1。 たとえば、女性の登場人物の「あら、」とか「〜のよ」「〜だわ」。ぼくは関東生まれの関東育ちで関東弁を話す、いわ…

小市民主主義宣言

ぼくのものごとを考えるときの姿勢は「プラグマティズム」に多くを負っています。その中でも特に、政治的な問題を考えるときの自分の立場について、あまりしっくりしたことばがなかったので、自分でつくりました*1。それが、こないだチラッと書いた「小市民…

前の仕事と今の仕事

前職の現場での仕事の様子は、たとえるなら、これは以前にも書いたかもしれませんが、「他のプレイヤーはなぜかそこらの小学生ばかりという監督不在のサッカーチームで試合をしている」という感じでした。 その原因と考えられるものの一つは、その場にいない…

「ゲーム脳」と子どもの教育

リヴァイアさん、日々のわざ:世田谷ゲーム講演について、ブログ内のリンクをまとめます これは、こないだ話題になった「世田谷区ゲーム脳講演会」の顛末を当事者であるライターの方がまとめられた記事です。 + C amp 4 + - 子供にとって有害なもの ゲーム…

社会人の“前・後”についての雑感

某ソフトハウスの実態についての告発記事を見たんですが、「世間知らず」の一言で片が付いてしまいそうな内容で、告発する側もされる側も、どっちもどっちかな、と、ぼくには思われました。 ただ、世間に出てなくて世間知らずなのは当然のことで、知らないこ…

森達也『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』(2)

マスコミの話は置いておいて、先に進みます。著者のことば。 撮影の準備期間も入れればもう二年以上彼らと接してきたことになるが、オウムについて君は何がわかったの? と訊ねられれば、僕はこう答えるだけだ。 「何もわからないことがわかりました」 世の…

森達也『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』(1)

こないだ『放送禁止歌』を採りあげました。世の中のこと、そして宗教の問題についてこだわりをもつぼくが、同じ著者の手になるこの本を採りあげない理由はありません。 「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔 (角川文庫)作者: 森達也出版社/メーカー: …

会話のイニシアティブと権力関係

巡回先である橋本大也さんのblogの以下の記事にコメントをば。 Passion For The Future: 「あたりまえ」を疑う社会学 質的調査のセンス ぼくはこの記事を読んでこう思いました。その書名にならって、その本に書いてあることも疑ってみたらいかがでしょうか、…

ヒマ人礼賛

ぼくは他人を「ヒマ人だな……」といって揶揄する人間になりたくないなあ、とつねづね思ってます。その理由と思われるものををいくつか思いつくままに書き出してみました。 一、ヒマ人という生き方 ヒマ人は理想とする生活スタイルですからね。自分がそうなり…

仕事、人生、そして教育(3)

最初にこれだけは言っておきたいと思います。 「転職しようと思っているにせよそうでないにせよ、25歳を過ぎたらできるかぎり早いうちに、一度は本格的な転職活動をしてください」、と。 転職活動を通してぼくが得た一番の教訓は、これに尽きます。 山一証券…

安藤健二『封印作品の謎2』

封印作品の謎 2作者: 安藤健二出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2006/02/16メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 44回この商品を含むブログ (72件) を見るこないだに続いて作品の「封印」に関わる本。 前著では「差別」に関わって規制された作品の紹介が主…

仕事、人生、そして教育(2)

前職を辞して無職となり、自分にとって、そして今の時代にとって「仕事」って何なのか、みたいなことを考えつつ、これからの身の振り方を考えてました。先月中頃より更新が止まったのは、それが一区切りして転職活動を始めたためです。そして、ひとつき足ら…

森達也『放送禁止歌』

放送禁止歌 (知恵の森文庫)作者: 森達也出版社/メーカー: 知恵の森発売日: 2003/06/06メディア: 文庫購入: 17人 クリック: 961回この商品を含むブログ (180件) を見るふり返ってみれば小学生の時分から、ぼくは「表現の保護と規制」の問題に関心を持ちつづけ…

きたみりゅうじ『新卒はツラいよ!』

新卒はツラいよ!作者: きたみりゅうじ出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2005/09メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 86回この商品を含むブログ (44件) を見る平成不況のまっただ中に求職することになり、中小IT企業に新卒未経験で就職、そして退職するまで。…

過労について(3)

〈私〉と過労死の日本的経営論 前回集中的にとりあげた大野正和さんのホームページ、あるとは知りませんでした……、リサーチ不足orz 言い訳になりますが(^^; サイトのタイトルに「名前」が入ってたほうがいいかもしれませんね。Googleで名前を引くと、他…

過労について(2)

ウェブ上に適当な資料が見あたらなかったので直接お見せできないのが残念ですが、前回紹介した森岡孝二『働きすぎの時代』には「労働時間の二極化」を示すグラフが示されていました。 労働者全体でみると一見ここずっと年間労働時間が減っているように見えま…

過労について(1)

前職の退職理由の一つが過労であったこともあり、どうしてそうなったのか、その状態の何がまずいのか、そうならないためにはどうしたらよいか、といったことを知りたかったので、「過労」関係でいくつか本や資料に当たりました。 「karoshi」ということばが…

現実的な「賢い」生き方のために(3)

社会の変化によって、現代は、生きていくために必要な知識が膨大になってしまいました。アリストテレスのように一人の学者がすべての学問を修めることなど夢のまた夢です。このような世の中では、必然的に「社会的分業」が要請されることになります。 どんな…

舟木一夫「高校三年生」

昨日の話の部分的なつづきです。昔の高校生というと、舟木一夫の「高校三年生」、というイメージがぼくにはありますね。もちろんこの歌がはやった当時、ぼくは影も形もなかったわけですが(^^; それだけにそれは正に「イメージ」の例として好都合かな、と…

「いただきます」って言ってますか?

考:「いただきます」って言ってますか? 「給食や外食では不要」ラジオで大論争−家庭:MSN毎日インタラクティブ この記事が物議を醸しています。一番中心的なテーマの部分だけ引用しますね。 TBSラジオ「永六輔その新世界」(土曜朝8時半〜、放送エリア…

文系と理系で筆跡は違うのか

@nifty:デイリーポータルZ:文系と理系で筆跡は違うのか オトコの筆跡 というわけで、ぼくも「武蔵野市」書いてみました。字体として一番近かったのは一応8番。ただ、ぼくの場合はもっと字が躍っていて、全体的に7番のように一筆書きっぽくなるんですが。 …

ウェブの広がりと参入障壁(3)

そもそも、ウェブというもの自体が、それまで出版や放送といったマスメディアによって独占されていた「不特定多数に対する表現の場」を多くの人に開いた新たなメディアとしてありました。ウェブがなければ、こんなにたくさんの人と知り合うこともなかったで…

「世代」と「年代」

生年の近い人々を一つの個性をもった集団としてくくる仕方に、「世代」と「年代」という2つの仕方を区別したわけですが、このへんの議論をもう少しだけつっこんでみます。 一般的な意味としてはどちらも似たようなものであって、実際辞書では同義としている…

伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド』

テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ作者: 伊藤剛出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2005/09/27メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 9人 クリック: 175回この商品を含むブログ (314件) を見る「第一章 変化するマンガ、機能しないマンガ言説」…

佐藤俊樹『桜が創った「日本」』

桜が創った「日本」―ソメイヨシノ 起源への旅 (岩波新書)作者: 佐藤俊樹出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2005/02/18メディア: 新書購入: 2人 クリック: 37回この商品を含むブログ (72件) を見る「桜語り」の社会学、といったような趣きの本。 植物にあまり…