まっか〜P『白玉アイドル』

ニコニコに投稿されるアイドルマスターカテゴリの動画(「ニコマス」)の単発紹介記事は実のところこれが初めてになりますが、謎かけのような不思議な読後感を得たのでその謎解きに挑戦してみたいと思い、この際blog記事にしてしまおうと思いました。
今回のお題は、こちらの作品。

  • 作・まっか〜P



★CAUTION!★★CAUTION!★★CAUTION!★
この記事ではこれからこのお話の考察に入っていきますので、内容に関するネタバレ(のようなもの)を含みます。
たった5分の動画なので、未見の方には先に本編を鑑賞いただき、その後本記事の続きを読んでいただければ。
★CAUTION!★★CAUTION!★★CAUTION!★

その前にちょっとおさらい

大元の『アイドルマスター』というゲームに、キャラクターとの会話を楽しむ「コミュニケーション」と、歌い踊る「ステージ」のシーンがあることを反映してか、ニコニコに投稿されるアイマス関連動画も大きく分けて、サウンドノベルのような「テキスト系」と、ミュージックビデオのような「PV系」に分かれています。(他にもいろいろありますがとりあえず)
テキスト系にもサブジャンルがありますが、本作のように小説を動画化したようなものは、本作のタイトルにもあるように「NovelsM@ster」略してノベマス、と呼ばれています。


作者のまっか〜Pは主にノベマスを製作されている動画投稿者ですが、作風がとてもユニークな方。
その処女作(→765プロ殺人事件【嘘予告】 by まっか~ アイドルマスター/動画 - ニコニコ動画)にもそれがよく表れてますが、「“余白の多い”作品」を作られる方だとぼくは思ってまして。
視聴者に多くの想像の余地を残し、行間を読ませ、あっさり終わらせることで雰囲気と余韻を味わわせる、と、そんな感じの。『Cafe Talk』シリーズのように、キャラクターの「顔」を故意に隠してその表情を想像させる、といった演出もよく見られますね。近い方をあげるとしたら、自分の心許ないノベマス知識からだと「百舌P」とかでしょうか…
基本的にあっさり淡々とした薄口で、しかもノベマスなので、動画説明文にある「投稿動画」のリンクから過去作を確認いただくとわかると思いますが、そのクオリティの割に再生数がふるわない「もっと評価されるべき」ニコマスPと思います。*1


というわけで謎解き開始

大筋を言ってしまえば、やよいの新曲の仮歌を、律子が千早に頼んだ、とそれだけのお話なのですが。*2
まずは一番わかりやすいところを導きの糸として始めてみましょう。*3

やよいのお父さんは大変な目に遭った?

YES。3:34からの律子と亜美の会話。

律子 「悪いわね。忙しいとこ。で、容態はどう?」
亜美 「んー。近々意識は戻るかも。発見が早期だったから望みはあるってさ。
   ただ、後遺症は覚悟だよねー。
   肉体的にもだし、未遂とはいえ、やっぱり、そーゆーこと、自分でしたんだから。」
律子 「問題は山積みね。頼んでおいたもう一つの件は、どう?」
亜美 「本来なら国民健康保険適応外だけど、カウンセリング受診したことにするって。
   就職先が見つからないとでも言っておけば、精神疾患として処理できるってさ。」

話を総合すると、やよいのお父さんは意識不明の重体となって双海医院に運び込まれ、一命は取り留めたものの依然として状況は変わらず。
早期発見のおかげで意識は戻る“かもしれない”が、…という状態のようです。

それは自殺未遂?

「未遂とはいえ、やっぱり、そーゆーこと、自分でしたんだから。」という亜美の発言を素直に受け取るならYES。お父さんの状況と、「自分で」「未遂」というキーワードから自殺未遂を考えるのは自然な受け取り方だと思います。
ただ、それだけではなかったのかもしれません。
…と仄めかすだけで次に行きます(^^;

その理由は生活苦?

やよいがアイドルを目指した理由の一つは、貧乏な家計を助けること。そこへ「就職先が見つからない」という話が出てくれば、これはもう生活苦を原因にして自殺未遂を図ったんだろう …と、素直に考えればYESな気がします。
ただ、亜美は実際には「就職先が見つからないとでも言っておけば、」と言ってるんですよね。
もちろん、就職先が見つかっていないこと自体は事実でしょう。でないと健保適用の申請理由にウソを書いたことになるので、それが何罪になるかは知りませんが問題になるはずですから。ただ、そのことが未遂の原因なのかはわからない。ということなのだと思います。
よって現時点では、YESともNOとも言えない。
しかし、理由はハッキリしないものの、その未遂の際に精神的に不安定な状態に陥っていたらしいことは「カウンセリング受診」「精神疾患」というキーワードから汲み取ることができます。


このシーンから得られるヒントで考えられることは、こんなところかと。

やよいちゃんアイドル辞めちゃうの?

おそらくNO、ではないでしょうか。たとえば2:50からの次の会話。

律子 「仕事なんてさせてる場合じゃないんだけど。」
やよい「いえ・・・・・・今は、私が頑張らないと、皆、困っちゃいますから。」

高槻一家の稼ぎ手としてお父さんを頼ることができない以上、「仕事」をもっているやよいが、残された家族を養わざるをえない。ここで言っているのは、そういう話でしょう。
それと、4:28からのこの会話。

律子 「近々皆にも伝えた方がいいのかしら。」
亜美 「それはダメダメだよーりっちゃん。余計やよいっちにダメージだって。」
律子 「そう、よね。」

事件を機にアイドルの仕事を辞めてしまうのだとしたら、「近々」皆に伝えたところでそれをやよいが知ることがないので、ダメージを受ける機会が見当たりません。だから、今後も765プロにとどまるもの、と思われたのです。

だとしたらなぜ、やよいは律子に会えなくなるようなことを言ったのか?

それなんですよね〜…
やよいが事件後も765プロにいるのだとしたら、3:08からの次の会話は何を意味しているのか。

律子 「・・・・・・そうね。それじゃあ、また。」
やよい「はい、また。
   絶対、絶対また会いましょうね、律子さん。」

このやよいの発言からすると、やよいは律子に(少なくとも当面の間)会うことができない、と言っているように見えますよね。
ムジュンがあるなら、この発言か、「やよいが765プロに残る」という前提のどちらかが本当ではない、ということになるはずです。

やよいの新曲の収録期限はなぜ明日?

0:34から。

千早「・・・・・・収録は、いつなの?」
律子「スケジュールのデッドはね。明日なの。」

アニメの声の収録について、体調不良等で後日別録りになった話を耳にしたことがあります。歌の収録も最悪リリースを延期する等して期日を伸ばす手もあることから、このような急なスケジュールはアクシデントによるものであることが明らかですし、それがやよいのお父さんの事件関連であることも当然の前提と考えてよいでしょう。でないのだとしたら、思わせぶりにも程がある(^^;
そのため、この「期限」は曲のリリースに関する期限とは思われません。
曲のリリースとは別の、何らかの期限があって(生じて)、それに対して曲の収録を明日までに行わなければならなくなった。ということだと思われます。
それではその、「何らかの期限」とは何の期限なのか。


ここで手持ちのヒントが尽きました。別のシーンに次のヒントを探しに行きましょう。

やよいはお父さんのことを思い出したくない?

YES。2:34からのやよいと律子の会話。

律子 「・・・・・・楽譜、いる?」
やよい「・・・・・・まだ、お父さんのこと・・・きっと、思い出しちゃうかなーって。」
律子 「野暮なこと聞いちゃったわね。ごめん。」

このシーンは、動画冒頭の千早と律子の会話、特に0:55からの次の話とつながっているものです。

千早 「・・・・・・高槻さん用の楽譜も貰えるかしら。書き込み、しておいた方がいいでしょう?」
律子 「書き込み・・・あー・・・。楽譜じゃなくて歌詞に直接で良いわ。後で私からやよいに渡すから。」
千早 「・・・・・・高槻さん、この前、ようやく楽譜が読めるようになったって嬉しそうに・・・・・・。」

やよいは千早の仮歌をもらって新曲の収録に臨むのですが、その際に楽譜を見ることを避けようとしている。その理由は、お父さんのことを思い出しちゃうから。
しかしではなぜ、やよいはお父さんのことを思い出さないようにしたいのでしょうか。


「大変な目に遭っているお父さんのことに思いを致すと、仕事が手につかない」
仕事をするのに支障があるから、今は思い出さないようにしておきたい。…いかにも健気で、やよい的に“真っ当”な理由かなーって、思います。
でも、本当にそうなのでしょうか。
これは穿った見方かもしれませんが、もっとストレートに、こんなふうに考えることもできるのではないかと思われます。
つまり、お父さんのことを思い出すのが単純に「嫌」なので、思い出したくない、と。


突然話が飛ぶようですが、ここで次のようなことを考えてみたいと思います。

タイトルの「白玉アイドル」はやよいのこと?

YES。とても奇妙な表題ですが、これが“誰か”のことを指していて、その“誰か”がやよいであることは、このサムネから明らかです。

で、『白玉』って何よ?

このサムネは、心をざわつかせるスノーノイズのようなサーッの音とともに現れる、5:05の画像が元になっています。
アイドルの顔を隠すのはまっか〜Pによく見られる表現ではありますが、この映像をそのまま見ていると、少しして「やよいの表情の見えない頭部」が出てきます。その絵ヅラを、不穏に思われませんでしたか?
…ぼくにはどうにも、これが「家で首をくくっている」図のようにしか見えませんでした。
この画が「いつの時点」のやよいの状況を描いたものかはわかりませんが、曲の収録のあと、やよいが自殺を図ったことを表している、のではないか。


まっか〜Pの動画説明文によれば「白玉=全音符または2分音符」ということですから、この線で考えを進めるなら、『白玉』はこの画像上ではいったん「首をくくる縄のようなもの」を指している、と解釈することができます。

亜美と律子の話は実はやよいのことだった?

本記事の冒頭で検討した、亜美と律子の会話。
よくよく見てみると、この二人、このシーンの中で「やよいのお父さん」とは一度も口に出しておらず、他の人の話をしていた可能性があります。
このお話の中で自殺(未遂)の可能性が示されているのは、他にやよいだけ。だとしたら、実はやよいのことを話していたのではないか。落ち穂拾いになりますが、この疑問についてここで考えてみたいと思います。


これは、NO。二人の会話の引用部最後、次の亜美の発言を見てください。

亜美 「就職先が見つからないとでも言っておけば、精神疾患として処理できるってさ。」

「就職先が見つからない」から「精神疾患として処理できる」。中学生(しかもアイドルとして仕事もしている)について言うことにしてはなんとも不自然すぎる。ここはやはり、やよいのお父さんの話をしていたと考えるのが自然な解釈と思われます。
というわけで、話を元に戻しましょう。

やよいが自殺を図るのはなぜ?

生活苦 …はすでに出てきました。
生活苦を理由にやよいが自殺しようとするでしょうか。それは、やや考えにくい気がします。
お金がない→自分が稼がないといけない→大変だ→ラクになりたい、と考えるよりは、それこそ年端のいかない弟妹たちのことを考えてがんばろうと考える方がやよいらしいでしょう。
貧乏なのは元からですし、お父さんに就職先が無いのも今に始まった話ではありません。今回の事件により「お父さんの医療費」が家計を圧迫するようになることは考えられますが、そこは亜美と律子(と社長?)が何とかしてくれそうです。生活の困難について、状況がそんなに変わったようには見えません。


だとすると。他に何か、考えられそうな理由は無いか。
・・・「お父さんのことを思い出すのが嫌」、というのは、そのヒントに、ならないでしょうか?


というわけでぼくの「解答」

もしかして、やよいはお父さんに何かされたの?

そういうことではないかと思いました。
そのように考えてみると、説明のつくことがいろいろとあります。

  • お父さんは精神的に不安定な状態だったから、「何かした」。

亜美 「本来なら国民健康保険適応外だけど、カウンセリング受診したことにするって。」

  • お父さんが「何かした」から、肉体以外の面(精神、家庭環境)に後遺症が残る。

亜美 「ただ、後遺症は覚悟だよねー。肉体的にもだし、未遂とはいえ、やっぱり、そーゆーこと、自分でしたんだから。」

  • やよいは「何かされた」から、お父さんのことを思い出したくない。

やよい「・・・・・・まだ、お父さんのこと・・・きっと、思い出しちゃうかなーって。」

  • やよいが「何かされた」から、765プロの皆には知らせないようにしておきたい。

亜美 「それはダメダメだよーりっちゃん。余計やよいっちにダメージだって。」

  • その「何か」とは、『白玉』である。
  • お父さんに「何かされた」としたら、やよいが自殺を図る十分な理由になりえる。
  • 「何かされた」やよいは近いうちにこの問題でアイドル生活を(少なくとも当面の間)離れることになる、と律子は思っている。

律子 「・・・・・・そうね。それじゃあ、また。」
やよい「はい、また。
   絶対、絶対また会いましょうね、律子さん。」

  • だから律子は、新曲の収録を早めようとしたか、もしくは千早の仮歌をやよいへの手向けにしようとした。

律子「スケジュールのデッドはね。明日なの。」

  • 主コメの「逃げた」は、やよいのお父さんが『白玉』でやよいにしようとしたこと、やよいがこれから『白玉』で自身にしようとしていることを指している。


・・・さて、いかがでしたでしょうか。


こう考えてみても、実はまだ一つ、未解明の謎が残ってしまっています。
「やよいはなぜ、『楽譜を見ると』お父さんのことを思い出すのか?」
何か思いつきましたら、お聞かせいただけると幸いです。

*1:テキスト系の作品は「お下品」で「濃い」ほど人気の出る傾向があります。ここ数年はフュージョンP、シンデレラ関係で他に相談Pやしぶん期P、ひところのマリンカリンPやヤスミツP、ちょっと前ならハリアーPやブリッツP、と名前をあげればニコマス視聴者の方には「なるほど」と思っていただけるかと。
ぼくは自分がそんなにお上品な人間でないにも関わらず実のところ「お下品」が苦手で、こうした人気作に手を伸ばせないというか、食わず嫌いはよくないので数話目を通すもののやっぱり肌に合わず。もともと少なそうなテキスト系動画視聴者の中でもさらにニッチな立ち位置にいるのが残念なところ。そうは言ってもマシンメイカーPなど許容範囲だったりするので、何がダメで何が得意かって本当は自分でも全然わかってませんが(^^;

*2:けっこうあっさり引き受けちゃってますけど、これが「プラ・ソニック・ラブ!」とかだったらいったいどんな顔して歌うことだろう、なんて想像してしまいます(^^; 「おはよう!!朝ご飯」があんな感じですしねw

*3:以降の書き物は「ウミガメのスープ」の形式を参考にしています。とは言ってもスタイルをマネているだけですが… 最初それっぽく書き出してみはしたものの、お話の真相を知らない人間の自問自答なのでYES/NOの定まらない疑問が出てきてすぐに破綻しました(^^;
ウミガメのスープがどんなものか知りたい方はこちらの動画をご覧いただければ。→【Novelsm@ster】七尾百合子とウミガメのスープ Prologue ‐ ニコニコ動画:GINZA