ニコニコらしさって? 落穂ひろい

ボカロお気に入り曲集シリーズのつづきをあげるつもりでしたが、気になる記事を見かけたのでちょっと予定変更。
「ニコニコらしさって?」シリーズのつづきになります。*1

弾幕」から「テンプレ」へ

まずはこちらをご覧ください。



そうそう、こんなだったこんなだった(^^) いやあ懐かしいなあ。
そんなことを思いつつ、そう言えばこのごろ、あまり「弾幕」って言わないな、見かけなくなったな、と。もちろん「おお弾幕」や「8888弾幕」を除いての話ですが。*2 ただ、それでは弾幕的なものが一切無くなってしまったのかと言えばそういうわけでもなく。「テンプレ」って、言いますよね。
弾幕とテンプレと、どう違うのか。まずは大百科記事から定義を見てみましょう。

「テンプレ」で引いたら「テンプレート」に飛ばされたため上記の紹介となりましたが、内容がなんとなくしっくりきません。テンプレについては、弾幕に関する上記のような動画に対応する投稿作も見あたらず。
テンプレといってぼくが意識し始めたのはアニメ『花咲くいろは』オープニングの「ここ不幸」だったかと思いますが*3 *4 、“お約束”として条件反射的に書き込まれる点で弾幕とテンプレのあいだに違いはなく、では何が違うのかといえばその「コメントの密度」でしょうか。


弾幕を見かける機会が少なくなって、代わりにテンプレと呼ばれるようになったのは、同じ動画をみんなで共有する機会自体が減ったわけではありませんので、単純に「同じコメントを書く人が減った」ということかと思われます。
前回の話とからめて言えば、「みんなで一緒に何かをする」ということが、ニコニコでは減ってきたような気が自分にはしています。

光の射す方へ

「週刊VOCALOIDとUTAUランキング」、通称「ぼからん」のうp主であるsippotanさんのブロマガで、以下の記事が投稿されました。

おそらくニコニコユーザーでなくても上記リンク先に飛べると思われますが*5、念のため記事内容のコアになる箇所を引用させていただきます。

あべちゃん @abe_chann
拡散希望】ユーザーの皆さんに個人的質問です。最近ニコニコは面白いですか?つまらないですか?理由と一緒に教えて下さい。長くなる方はabechann2525@gmail.comでも受け付けてます。正直な意見を聞きたい。
https://twitter.com/abe_chann/status/306891641988452353


出来る限りのジャンルを集め、ニコニコ超パーティーを成功させた阿部Pが、
正直こんなツイートをするのはいただけないのですが、
運営も「ニコニコはつまらない」と囁かれている状況を意識している、
このツイートはそれを物語るものです。


で、自分の個人的見解での回答は、ニコニコは面白いです


(中略)


それなのに「ニコニコはつまらない」と思ってしまう理由は何なのか?


(中略)


つまり、この例で説明した「つまらない」の理由は、
単純に言えば「好きではない事をやらされる事」です。

拝見して思ったのは、sippotanさんとぼくとでは提示する処方箋の方向性が正反対だなあ、と。


sippotanさんの議論を突きつめていくと、目指す方向性は「ニコニコの個別化(personalization)」となりそうです。もし可能であれば「その人が見たいと思っているものだけを見せる」仕掛けを構築すること。
誤解のないように付け加えますが、sippotanさんがそのような処方箋を直截に提示しているわけではありません。「面白くない」と思えることがあるのだとしたら、「見たくないと思っているものを見せられてしまう」経験の積み重ねのせいじゃないか。と現状認識を述べられているだけと思います。その話をさらに一歩進めて、「ではどうすればいいか」と考えだすと、そうなるのじゃないかと自分には思われました。


ぼくは、前回にも書いていますが、「以前からいた人」が「ニコニコがつまらなくなった」ように思うとすれば、その原因の一つに「ニコニコの個別化」があるのじゃないか、と感じています。
多くの人が流入して多くの動画が投稿されるようになった結果、ユーザーが同じ夢を共有できなくなったこと。
また、前回書いてませんでしたが、ニコニコが“プロジェクト”として、(営利)企業として大きくなった結果、遊びの要素や手作り感が減じたこと。
そんなこんなで、在りし日に比べて今のニコニコがよそよそしく感じられるようになったこと。「ニコニコの都会化」と、言うこともできるでしょうか。*6


sippotanさんもぼくも、「いろんな人がいる」ことは議論の自明な前提になっています。
人それぞれ価値観は様々なのだから、それに合わせて見るものが切り替えられるといいのじゃないか。
人それぞれ価値観は異なっていても、同じ場を共有する体験にも他に代えがたい快があるのでそれを何らかのかたちで供給することはできないか。
明らかにこの二つの意見は正反対の方向を示しています。*7 改めて見直すと、どちらもそれぞれうなづける意見であり、この問題の根深さを感じずにはいられません…*8


というわけで最後に、大好きなこちらの作品を紹介させていただいて、結論の出せない駄文を締めくくりたいと思います。



みんなニコニコしようぜ!

*1:このネタ、他にも書きたいことがいくつかありますので、またいつかつづきをあげるかもしれません(^^;

*2:おお弾幕とは感嘆の声である「おおおおお」がたくさんコメントされている状態、8888弾幕はそのまま「8888」(パチパチ。拍手)の弾幕を指します。「うぽつ」や「GJ」とともに、ぼくもよく書き込んでます。

*3:「幸ちゃん」という、ヒロイン緒花(おはな)の幼なじみで相思の関係にある登場人物がいるのですが、ストーリーの中で緒花と心理的にも物理的にもすれ違いまくった結果ついたあだ名が「不幸ちゃん」(^^; アニメのOPやEDではお気に入りのカットが映ると「ここ好き」と書き込む人が以前からいましたが、幸ちゃんが映るカットにどなたかが「ここ不幸」と書き込んで以後、幸ちゃん登場シーンに「ここ不幸」と書くのがお約束のようになってしまいました。

*4:ちょうどいいことに、来週の土日二日に分けて『花咲くいろは』の一挙放送が予定されています。癒し系アニメの傑作としておすすめできる作品です(^^) 未見の方はこの機会にどうぞ。→ニコニコアニメスペシャル「花咲くいろは」第1話~第13話一挙放送~1日目~ - 2013/03/09(土) 17:00開始 - ニコニコ生放送 同じスタッフの手がけたこちらも癒し系の良作『TARI TARI』の一挙はこないだ終わっちゃいました。『たまゆら』は2期が今年7月に予定されてますので、その直前ぐらいに1期の一挙をまたやっていただけるのではないかと期待しています。

*5:ニコニコをログアウトした状態で見に行っても見られました。

*6:こちらも参照のこと。→サービス終了のお知らせ - NAVER まとめ

*7:政治的には、前者は個人主義、後者はコミュニタリアニズムに近い。ぼく自身の政治的信条はむしろ個人主義尊重派なのですが、心情的にはコミュニタリアニズムの言い分にも多少同情があるため、このような矛盾した態度として現れてしまっています。保守的・コミュニタリアン的な「昔は良かった」論をぼくは毛嫌いしていますが、だからと言って昔は悪かったと思っているわけでも特に無いので…

*8:「白河の清きに魚も住みかねて」ではありませんが、好きでないもの、嫌なものが一定数存在するのを受容することはぼくは必要と思っています。たとえば「新しいもの」は守旧派にとって常に脅威であり嫌なものですしね。「インターネットは青少年の教育に悪い」「マンガは(以下略)」「テレビは(略)」どころか「小説は青少年の教育に悪い」「野球は青少年の教育に悪い」と今や健全育成の代名詞となっている小説や野球すら槍玉に挙げられていた歴史を振り返ってみると…。→社会的な身体~振る舞い・運動・お笑い・ゲーム (講談社現代新書) ニコマスだって「モバマスなんかアイマスじゃない」という人もいますが、過去を振り返ると「ノベマスなんか架空戦記じゃない」さらには「架空戦記なんかアイマスじゃない」と言われていた歴史があるわけですし。→【愛m@s24】ニュー・ニコマス・パラダイス 1 - ニコニコ動画【第三次ウソm@s】よくわかる?iM@S架空戦記シリーズの歴史【~2007年末】 - ニコニコ動画