銀行と信託銀行の違い

ぼくが株式を保有している「住友信託銀行」が、この4月から「三井住友トラストホールディングス」に変わりました。
中央三井信託銀行と合併して「三井住友信託銀行」となるのに、持株会社方式をとったためです。


住信の株を持っていたのは、メインバンクを住信SBIネット銀行としており、その親会社に対する親近感からのことでした。*1
しかしこの合併により、ぼくの国内株式ポートフォリオは微妙にわかりにくい感じに…。というのも、ぼくは同時に「三井住友フィナンシャルグループ」も保有しており、この二つの金融機関が<別会社として>並んでいるのが何とも奇妙に思えたからです。
片や三井住友銀行を擁する国内有数の金融持株会社であり、片や三井住友信託銀行を擁する(予定の)やはり国内有数の金融持株会社であり、同系列のようなのになぜか別々になっているのはなぜなんだろう、と思いました。


この疑問は大きく二つの部分からなっています。

  • そもそも「銀行」と「信託銀行」って何が違うの?どうして別れているの?
  • なぜ三井住友グループは銀行と信託銀行で別々になっているの?どうせ合併するなら、(三菱UFJ FGがそうであるように)三井住友FG傘下に全部集まっても良かったのでは?

ぼくは金融機関のシステム開発に携わっているいわゆる「金融系SE」であり、一応金融のプロの“はしくれ”です。*2…と自覚していながら、あるいはそれゆえに、同時に自分の金融業に対する理解の浅さを日々痛感してもいます。*3
ここに挙がったような疑問は、金融マンの「常識」の範疇に属することなのではないか。
そう考えて、調べることにしてみました。まずは前者の疑問「銀行と信託銀行の違い」から。


というわけで、まずは本家にて確認。
住信のホームページにあるFAQ。ぼくと同じような疑問をもつ人は多いようです。

合併でこのページが無くなってしまうかもしれないので、必要な箇所を引用します。(以下同様)

信託銀行は、商業銀行と同様、銀行業務を営んでおります。このほか、お客様の資産をお預かりし(信託)、お客様に代わって運用・管理を行う、信託業務を行っております。

しかし、これを読んでもいまいち納得いかないため、ググってみることにしました。そうして最初に引いたのがこちら。

Q:
信託銀行と銀行の決定的な違いはなんでしょうか?
例えばUFJ信託とUFJの違いです。
A:
信託銀行は、預金や貸し付けの他に、貸付信託・金銭信託・動産や不動産の信託・土地信託・証券代行・不動産の売買の媒介・鑑定評価といった財務管理業務を行っています。


いやいやいやいや。もとの質問が短すぎることに問題があるかもしれませんが、この回答ではまったく不十分です。
そんな教科書的なことは、それこそ教科書を読むなりWikipedia先生にお伺いを立てればわかることだからです。この質問者がそんな紋切り型の回答をほしがっていたわけでないことは、「例えばUFJ信託とUFJの違いです。」の一文から推察できます。この回答は、UFJ信託銀行UFJ銀行が別々に存在する(存在しつづけている)ことを、まったく説明していません。
商業銀行が銀行業務を、信託銀行がそれに加えて信託業務を行うこと、そんな字面の話はわかってる。そんなこと言ったって、現実に、信託銀行でない商業銀行が信託業務だってやってるじゃないか(たとえば投信の販売)。それなのになぜ、これらは別れているの?同じようなことをやっているなら一つの会社にまとめてもいいんじゃないの?それとも、別々でないとできない「決定的な違い」が何かあるの?


…というわけで、今度はくだんの三菱UFJ FGの状況を確認しました。

ここで、「三菱東京UFJ銀行」と「三菱UFJ信託銀行」、「三菱UFJ証券」、および「三菱UFJ投信」の違いを正確に説明できるなら、一人前の金融マンということができるかもしれません。


もう少し調べてみると、同じ質問サイトで類似の質問はいくつも出ているようで、ぼくの抱いた疑問に答えを与えてくれるようなものもありました。
先の質問と何が違うんだろうと考えると、やはり「質問の仕方」に問題があったのかな、と。
質問内容が短いと、回答者から見て「何も知らない人」に見えてしまうため、何も知らない人向けの回答として先ほどのような紋切り回答をすることしかできません。回答者は「エスパー」ではないため、直接与えられていない情報について忖度する義理はないからです。
その逆に、ある程度のことを質問内容に含めていると、それは要するに「自分は知らないで聞いてるわけじゃないんだよ」というシグナル、極端な話“見せ金”レベルで問題ないわけですが、そうすると回答者も、有識者向けの回答をするようになるのです。
というわけで当の回答をご覧ください。

まったく同じタイトルなのが面白いところですが、回答されている方も質問者を「有識者」と見て、真摯な回答をしようとしているのが伝わってきますよね。
結局わかってきたのは、昔は法律上分かれている必然性があったものの、昨今の金融自由化でその境界があいまいになり、その違いは「程度の問題」になってきたこと。効率化を進めるなら合併してしまったほうがノウハウの共有にも役だってよいとも思いますが、顧客セグメントの違い等、信託銀行と商業銀行では「性格」がやや異なっているため、あえて残しているのではないかということ、でした。
もう少しだけつっこんだ話がこちらに。

なるほど、と腑に落ちたわけではありませんが、これ以上のことはまたおいおい調べてみたいと思います。

*1:分散投資の原則には反していますが、金融系の銘柄は他にもいくつか保有しています。身近でわかりやすいから、というのが一番の理由ですが、もう一つ、金融業は「景気敏感株」なので不景気の今が買いだというイヤラシイ動機もあります…(^^;

*2:なので、みずほ銀行の振込トラブルは他人事とは思えませんでした(^^;;

*3:友人はぼくが投資していることを意外に思ったようですが、たしかに以前のぼくはそうしたことに縁がありそうにない人間でした。投資を始めた理由は生活リストラシリーズに書いていますが、それ以外にも、金融の仕事をしているのでそれが身近なものになっていたことが大きな原因の一つだったと思います。