『ゴーストトリック』と『逆転裁判』

ゴースト トリック

ゴースト トリック

ゴーストトリック』、ようやく終わりました。
体験版をやってわかるとおりの「ピタゴラスイッチゲーム」です。『逆転裁判』とはだいぶ趣きの異なるゲームだったので、逆転裁判好きの人にそのまま勧めてよいものかどうか迷うところですが、登場人物やストーリーの感じは全編にわたって「タクシューテイスト」にあふれていたので、それを求めていた人に対してはおすすめできるゲームだと思います。
少なくとも、ぼくはけっこう楽しめました。次回作は3DSゴーストトリックの続編を出すような噂もありますが、躊躇なく購入すると思います。


ぼくは根っからの逆転裁判ファンで、ケータイの着メロはもちろんですが*1、ちょくちょく繰り返し遊んでいるものでして。
1の発売から2の発売までに1を1回、それから3の発売までに1と2を1回、さらに4の発売までに1・2・3を2回*2。ついで『逆転検事』の発売までに1・2・3を1回。そして今回、ゴーストトリックの前に1・2・3・4・検事を1回、通しでやっています。数えてみると、1が全部で7回、2が6回、3が5回、4と検事が2回ずつ、ということになりました。
逆転裁判4』がシリーズ最低の駄作、という人はたくさんいますが、自分も例に漏れずそう思っています(^^; なので、新作が出る前には復習の意味をこめていつも最初からすべて通しでやるのですが、逆転検事のときには(『4』が前作になっていないこともあり)『4』を飛ばしました。今回のゴーストトリックではたいへん久々、発売が2007年でしたから3年ぶりぐらいにやりましたが、当時の感触と比べると、「意外に悪くなかったな」と多少評価をあげました。


『4』がダメだと思ったのには、明確な理由があります。


新機軸の仕掛けが、まず受け付けませんでした。「見抜きシステム」と「科学調査」なんですが。なぜダメかといえば、これらによってこのゲームは、「推理」から遠ざかってしまったからです。
それらがこのゲームの本質と無関係でないことは重々承知しています。見抜きシステムは要するに「間違いさがし」のようなものでしたが、法廷パートでのツッコミもある意味「論理的な間違いさがし」と言えなくもないからです。しかし、ぼくは逆転裁判の「推理」を楽しんでいたのであって、「すいりゲーム」がやりたかったわけではないのです。推理を探偵パートにもちこむ「サイコロック」の代わりに、探偵パートからも法廷パートからも推理を排除していくようなその変わりように、ぼくはついていけませんでした。*3
その意味では、逆転検事になって新機軸として「ロジック」が導入されたのは、仕掛けとしてはごく単純ではあったものの、自分としては喜ばしい変化でした。


もう一つダメだったのが、全体の「雰囲気」でした。もっと直截に言えば、あの暖かく心地よかった逆転裁判の世界が、非常に「冷たくなってしまった」、と感じたのです。
2chでは「ダルホド」なんて呼ばれてしまってますが、前作までの主人公・成歩堂龍一の変わりようにまず驚き悲しみ。新主人公は多少幼くやる気が空回りするタイプで、それなりに頼りがいがありかっこよかった前作までと比べて見かけ含め3枚目としか言いようがない人物造形。アドバイザーは非協力的でシラケた感じ。ライバル検事はシリーズ一のイケメン&けっこうまとも&主人公より年上なのが裏目に出て、主人公とのコミカルなやりとりが実現せず、むしろ主人公はバカにされる一方。その他登場人物も、ヤハリやオバチャンやナツミさんのような愛嬌のあるキャラクターはあまりいなくて*4、感じるのは距離感ばかりで親しみがわかず。BGMにもあまりいい印象をもたず、グラフィックのほうはとてもキレイでしたが、それがかえって冷たさを効果的に演出することになったように感じています。
前作までとの「差別化」に悩んだ挙句、“逆転裁判ワールド”の良かったところをひととおり改悪してしまった。そんなふうに思われました。その意味では、前作シリーズとの「同質化」を志向した逆転検事の方向性は、クリエーターはともかく、ファンにとっては正解だったと思います。


他に思ったのは、“逆転”の代名詞である「どんでん返し」が少ないように感じたこと、それからやはり、シリーズ最高傑作だった(とぼくが思っている)『3』の次回作として期待され、かつ間が3年間とけっこうあいたのでウズウズが非常に高まったところで出されたことで、<大幻滅>の憂き目にあったというのが不幸なところかな、と。久しぶりにやってみて評価がむしろよくなったのは、この「期待」がないことも理由の一つとしてあったと考えられます。
ゴーストトリックでは、超えるべき「前作」がないためのびのびやれた結果、逆転裁判の“古き良き”「タクシューテイスト」をかえってよく残してくれたのではないかな、と。主人公は“みっちゃん”的でけっこうかっこいいし、ヒロインは『蘇る』の頃の茜をもう少し大人っぽくした感じで好印象、他のキャラクターもたいがい(絵のポップさ含めて)よかったと思いました。あと、BGMも今回すごくよかったです。


それからするとゴーストトリックの次回作は、期待半分、不安半分、といったところでしょうか…。
逆転検事もよかったのですが*5逆転裁判の『5』も、どーかどーかよろしくお願いしますカプコン様!

*1:さすがにトノサマンじゃないです(^^;

*2:2回やったのは、その間に『蘇る逆転』の発売があったので、そのつづきで一周したぶんを含んでいるためです。

*3:あるときなど、見抜きシステムのシーンでどこがおかしいのかぼくはなかなか見つけることができず、一時間も足踏みをしたことがあります。ようやくわかったときには、これが逆転裁判なら「なるほど、そういうことだったのか!」と感心するところですが、「そんなの、わかるかよ!」とむしろ腹が立ちました。久々にやったら評価が改善した理由の一端として、見抜きシステムの答えがわかっているのでこのような腹立ちを経験せずに済んだことがあったと言っていいでしょう。

*4:その可能性があったキャラクターでも、みぬきは超然としており、茜は主人公を子供扱いして距離を置き、唯一よかったのがやたぶき屋のおやじだけ。デフォルメちっくな漫画っぽいキャラも好きだったんですが、『4』のそれはむしろ“気持ちの悪い”キャラばかりだったと思います。その他『4』の登場人物は「外国人」「ヤクザ」「ロッカー」等々、揃いも揃って「近寄りがたい」印象のキャラだらけという感じがします。

*5:ぼくの逆転検事の評価は「そこそこよかった」です。やっぱり「どんでん返し」分が不足していたのと、逆転裁判のようには激しい応酬が(ゲームの性格上原理的に)見られないことが、不満として残っています。