過労について(1)

前職の退職理由の一つが過労であったこともあり、どうしてそうなったのか、その状態の何がまずいのか、そうならないためにはどうしたらよいか、といったことを知りたかったので、「過労」関係でいくつか本や資料に当たりました。


「karoshi」ということばが世界に通用することからわかるように、日本人といえば「働きすぎ」「社畜」「エコノミックアニマル」というイメージがあります。ところが、これは同時代の世界全体の動向や、日本の過去を見ると、必ずしも正しいとは言えないということがわかりました。

この資料から、先進国に比べて発展途上国の労働時間が明らかに長いことがわかります。日本人の労働時間は、発展途上国の人に比べればそう長いわけではありません。

こちらは労働時間の年度による変化です。日本人の労働時間は、1990年頃を境にガクッと落ち、その後も減少傾向にあることが示されています。なぜそうなったのかについても触れられていますが、外的圧力に応じて週休二日制を普及させたことによるようです。年代から見て、バブルがはじけて仕事が減ったようにも思われるのですが……。
先進国の労働時間としては「アメリカが日本を追い抜いてトップに立った」ということが言われますが、このグラフを見る限りでは、アメリカが抜いたというより日本が落ちたと言うべきでしょう。


しかし、このグラフが、どうにも自分の主観に合わないというか、計算が合わない感じがするんですよね。毎月20日、毎日8時間働いたとしましょうか。12×20×8=1920。おかしくないですか? ふつうに働いたとしても年間1920時間は働いてるはずなのに、このグラフによればそれより100時間も短いことになる。これが自分の実感とは全然食い違うんですよね。常識的に考えてもそんなで済むはずはなくて、もっと残業や何かでふくれあがってるはずだし、年休だってとれないのがふつうだろう、と。これはもしや「サービス残業」が計上されていないためではないか、と疑いたくもなってきます。
その辺のカラクリの一つが、森岡孝二『働きすぎの時代』ISBN:4004309638した。それは、グローバリズムと平成不況による「階層社会」化が進み、週の労働時間が40時間未満の短時間派な非正規雇用者と、50時間60時間あるいはそれ以上といった長時間派の正規雇用者とに二極分化したことによる、という話です。このグラフを見る限りでは年々労働時間が減っているようにも見えますが、それは非正規雇用の拡大によるものであって、正規雇用者の労働時間が減ったことを意味していないかもしれない、ということなんですね。その意味で一つ参考になるのが次の表です。

先ほどの労働時間のグラフでは1990年ごろガクッと落ち、その後も労働時間が減り続けているという話でしたが、この表を見るに、過労死の認定件数は1995年ごろより以後ハッキリと増え続けているように思われます。自殺者(過労自殺)も1999年以後激増している。もちろんこの表は「認定」件数ですから、実態を表わしていない可能性はありますが、参考にはなるでしょう。
労働時間が減っているのに過労死が増えている。これは現代人がひ弱なせいだ。……と言い出す人も出てきそうです(^^; それでいくと1990年以前の人は「現代人」ではなかったんですかね。なんかその頃「新人類」とかいうことばが流行ってたような気もするんですが。


今回は簡単な世情分析編でした。つづく。